就活の面接で必ずと言っていいほど聞かれる質問、それが志望動機。定番な質問なのでありきたりな回答を考える人もいますが、ダイレクトに企業への思いを伝えるにはとても重要な質問です。
しかし、実際に志望動機を作ってみた時、どこの企業でも使えそうな内容になっていませんか?または、企業にとって魅力的な内容ではなく、自分本位に考えていたり、ありきたりな社会貢献の文章になっていないでしょうか?
もし、こういった誰もが書きそうな志望動機を作っていては、面接官の心に響くことはないと思います。そして、最終的に「あなたのような人材が欲しい」とは思ってもらえないでしょう。志望動機は事前に考える時間があるだけに、しっかりしたものを用意しなければ非常にもったいないのです。
そこで、このページでは面接官の心を魅了する志望動機の作り方を紹介していきたいと思います。具体的に言うと、企業研究をセットにしたやり方です。順を追って構成を考えていけば、きっと他者に差を付ける志望動機が出来るでしょう。是非参考にしてみてください。
志望動機の役割
企業はなぜ志望動機を聞くのか考えたことはありますか?それは、あなたが会社に入ってどんな仕事をしたいのかを聞くためです。それ以上でもそれ以下でもありません。
ここで1つ、例え話をしましょう。
あなたが野球部の部長で、1人だけ女子のマネージャーを採用したいと考えたとします。募集をかけてみたところ、3人のマネージャー候補が面接にやって来ました。そして1人1人面接を実施してみると3人の志望動機は以下のようにバラバラになりました。
- Aさん:「野球部の彼氏を作るために入りたいです」
- Bさん:「野球を見るのが好きなので入りたいです」
- Cさん:「野球部を甲子園に導きたいから入りたいです」
この時にマネージャーとしてしっかり動いてくれそうな人はCさんではないでしょうか?なぜなら、野球部のためにマネージャーをしたいと言っているからです。他の2人を見てみると、自分の欲を満たすためだけにマネージャーになろうとしています。これでは本当に野球部の力になってくれるかは分かりませんよね。
上記と同じように、企業は面接をすることによって、あなたがどうやって企業の力になろうとしているのかを聞こうとしているのです。そして、複数の人を面接していく中で、最も企業の戦力になるために努力をしてくれそうな人を社員として招き入れます。
『志望動機を正しく解釈できているか?』でも書きましたが、志望動機の意味を勘違いしてはいけません。
もし、「志望動機を教えてください」を「なぜこの企業に入社したいのか、理由を教えてください」と訳してしまうと、様々な答えが出来上がってしまいます。例えば、「○○という経営理念は私の志と通じるものがあったからです」や「この地元で働たいからです」、「私の強みを御社の○○の仕事に生かしたいからです」などです。
しかし、「志望動機を教えてください」を正しく「この企業に入社して何がしたいのか教えてください」と訳せていれば、答えは1つの方向性にまとまります。「何がしたいのか?」と聞かれて、「経営理念に惹かれたからです」や「地元で働きたいからです」とは答えられないでしょう。答えるとすれば、企業の具体的な仕事を挙げ、「御社の○○という仕事がしたい」「私の強みを御社の○○の仕事に生かしたい」と答えるのが妥当となります。
志望動機には、仕事を絡めて実現したい目的を答えるべきなのです。そして、適切な志望動機を作り上げるためには、適切な企業研究が必要不可欠となります。
多角的企業研究の方法
志望動機を考えるためには、まず企業の仕事内容をよく知っておく必要があります。そこで、ここからは仕事内容を知るための企業研究の方法を紹介していきしょう。
多角的な企業研究のススメ
企業研究をするにあたって、最も手っ取り早いのは企業の公式ホームページを見ることです。これを最大限利用することによって様々な視点から仕事内容を知ることが出来ます。
しかし、多くの求職者は公式ホームページのどこを見ればいいのか分かっていないので、十分な企業研究が出来ていないと感じます。そのため、「企業の経営理念に惹かれて~」などのようなありきたりな志望動機が大量に出来上がってしまうんですよね。これは非常に残念なことだと思います。
企業研究で大事なのは仕事の表面を知ることではなく、仕事の背景を知ることです。背景というのは、仕事の考え方・取り組み方のことです。基本的な考えとして、会社というのは、社長の方針で動いています。そして、社長の方針を実現しようと、多くの社員が思考を凝らして仕事に取り組んでいます。その結果がお客様の満足につながっているのです。
社長、社員、お客様の声を知ることで、仕事内容の深い部分を見つけ出す。
これこそが多角的な企業研究であり、具体的な志望動機を作るためには必要な作業となります。
企業研究の材料を集めていく
企業研究の基本は、仕事をよく知ることです。会社は仕事をする場であるので、当然と言えば当然のことでしょう。
そして、仕事をよく知るためには社長、社員、お客様の声を集め、仕事内容の深い部分を見つけ出すことが重要です。というわけで、以下のような企業研究シートを作成してみました。それぞれの項目については、箇条書きで記していくと要点がまとまって分かりやすくなります。
これから、上の企業研究シートの項目について1つずつ説明していきたいと思います。
事業内容(事業紹介)
企業の志望動機を考える際、どのような事業を展開しているのかを知っておく必要があります。その理由は、どんな事業があるかを知ることで、企業が何をしたいかを考えることが出来るからです。
企業というのは大抵、いくつかの事業を持っています。なぜなら事業が1つしかない場合、その事業の先行きが成り立たなくなった時に倒産してしまうから。いくつか利益を生み出す事業を持つことで、リスクヘッジをすると同時に企業規模を大きくしていこうとしているのです。
多くの企業の公式ホームページには、事業内容(事業紹介)のページが存在しますね。見つけたら、事業の名称をノートなどにすべて書いていきましょう。この時に注目してほしいのは、ズバリ一番上に紹介されている事業です。おそらくそれが一番力を入れていて、利益に貢献している事業です。
例(とある住宅メーカー):
- 戸建住宅事業(一番力を入れている事業)
- 賃貸住宅事業
- マンション事業
- 街づくり事業
- リフォーム事業
社長メッセージ(トップメッセージ)
社長メッセージ(トップメッセージ)は、企業のホームページには必ずあるでしょう。ただし、書いてあることは抽象的なことが多い印象です。一度読むだけではよく分からないこともあります。
しかし、社長が目指していることを元に、社員の方たちは仕事に取り組んでいることを念頭に置いてほしいんです。社長が述べていることから重要だと思われるキーワードを抜き出し、箇条書きに書いていきましょう。
例(とある住宅メーカー):
- 人生をごいっしょに
- お客様と生涯に渡ってお付き合いしていきたい
- 住宅を建てた後もお客様の期待に応えていきたい
- 日本の住まいをよくしたい
- 住宅はそこに住む人々がつくり出す暖かい空間
採用情報の社員紹介
企業の公式ホームページにある採用情報のページを見ると、社員の紹介がされていることがあります。ない場合は仕方ありませんが、あれば是非参考にしたい部分ですね。
社員のコメントには、メインとなる仕事内容と、仕事をする上で難しいところ、何を心掛けて仕事をしているかについて書かれているはず。それらをセットにしてまとめていきましょう。特に、募集されている職種を担当している社員の声があれば、志望動機を作る時の良い材料になります。
例(とある住宅メーカーの営業部門):
- 営業(マーケティング)は社内の人間の中でも最もお客様に近い存在。
- 構想・開発・価格決め・アフターフォローすべてに関わってくる。
- 向き合うお客様へのインタビュー、販売店に届くお客様の声(価格の要望・機能・設備)を通して、本当にお客様が必要としているものを自信をもって訴求し、売っていくことが大事。
- お客様が必要としていることを効果的な切り口で探し出し解決する。そのためには関係部署との会議、打ち合わせの中での情報のやり取りが大切になってくる。
- 仮にあるデータよりも、自分から動き、自分の目で情報を集め、貪欲に事実を求める能力が必要とされる。
お客様の声
企業はお客様ありきで仕事をしているのは明白な事実。そのため、企業のホームページを見ると「お客様の声」「実例」「お客様の声を活かしました」などのようなページが設けられていることがよくあります。
もしあれば、お客様が何を求めていて、どんなことで満足したのかを抜き出してみましょう。また、このようなページの下には、担当した社員のコメントが添えられていることが多いです。社員はお客様の満足を得るためにどんなことを心掛けたのかを確認してみましょう。
例(とある住宅メーカー):
- 木の風合いを取り入れたキッチンに満足
- 柱・壁の少ない開放的な空間に満足
- 家族とつながれる開放的な空間に満足
担当社員が心掛けたこと:
- お客様の時間が無かったため、写真を見せたり、ショールームに招いたりして、具体的に提案することを心掛けた
- お客様のインテリアの趣味を聞き、イメージをどのように実現するか考えた
- 変形敷地を活かし、北東部に広がる美しい森を眺められるように工夫した
求められる能力
「求められる能力」の欄には、社長メッセージ・採用情報の社員紹介・お客様の声を参考に、社員にはどのような能力が必要とされているのかを予測して記入していきます。
これが分かれば、自然とどんな人材が必要とされているのかが分かってくるはずです。
社長メッセージから推測される求められる能力:
- お客様とは一生涯付き合っていくことを前提に、親身に対応する能力
- お客様が生活する場面を想像しながら住宅の提案をしていく能力
社員紹介から推測される求められる能力:
- 営業はお客様とすべての工程において関わっていくため、関係部署の方との情報の共有は不可欠(協調力)
- お客様の声を聞き逃さず、要望に応えていく問題解決力
- 必要な情報は何か?どうすればその情報を手に入れることが出来るのか?を自ら考え、積極的に動いて情報を集める能力
お客様の声から推測される求められる能力:
- お客様の要望を最も実現できる方法を考え、提案する能力
- お客様がより満足するようなアイディアをひねり出す発想力
求められる能力と合致する自分の強み
「求められる能力」に記入したものと、自分の強みの中で合致するものがあれば、それは面接でのアピールポイントとなるものです。
もし現状で自分の強みが分からない人は下の記事で紹介している自己分析の方法を参考に考えてみてください。
改めてどんな仕事がしたいと思ったか?
この欄では、社長メッセージ・採用情報の社員紹介・お客様の声などを知った上で、どんな仕事がしたいのかを記入していきます。
もう少し詳しく言うと、
- どんなことを心掛けてどんな仕事がしたいか?
- お客様にどんな満足をしてほしいか?
- それらの仕事を通して何を得たいか?
などを具体的に考えていくのです。
ここまで企業研究を進めれば、仕事に対する知識が増えているはずなので、きっと仕事のイメージが湧きやすくなっていると思います。そして、仕事に対する意欲・熱意・モチベーションも自然と増え、面接で答える時に説得力が増します。それぞれの項目を調べるのはなかなか面倒ですが、是非この私が考え出した企業研究にチャレンジしてみましょう。
ワンランク上の企業研究
上にあるような基本的な企業研究を終えたのであれば、続いてワンランク上の企業研究をしてみましょう。これは企業の過去・現在・未来の考察と、競合他社との比較をすることで、面接官から志望動機を突っ込まれた時に説得力のある返しが出来るようになるものです。
では、上のシートの項目について1つずつ説明していきます。
過去に力を入れてきたこと(受賞歴・沿革)
志望する企業の過去を知ることで、その企業の本当の実力を知ることが出来ます。受賞歴はその最たるもので、社会的に認められた証・功績ですよね。
また、沿革からは企業の成長スピードが分かります。何か気になる部分があれば、抜き出して記入しておきましょう。
例(とある住宅メーカー):
- 2004年にグッドデザイン賞受賞
- 2008年に長期保証「○○」を導入
- 2009年に戸建販売数が東海3県No.1を達成
- 2009年にキッズデザイン賞受賞
現在・未来に力を入れていること(ニュース・ビジョン)
企業の公式ホームページを見ると、「ニュース」のページがよくあります。この部分は最近の出来事について書かれています。例えば、事業の統合や海外への社会貢献についてですね。そういった部分から、事業の現状を垣間見ることが出来ます。
他にも、企業によっては今後のビジョン・目標についてのページが設けられている場合があります。これを見れば、求める人材像・能力を知ることが出来たり、企業の強み・課題・弱点を知ることも出来ます。気になる部分は抜き出しておきましょう。
例(とある住宅メーカー):
- 耐火構造の3階建賃貸住宅を○○と共同開発
- ゼロエネルギーハウスを投入
- 防犯性能の高いオリジナル電気錠「○○」を発売
他社比較
面接をする中で、時折聞かれるのは「どうしてこの企業なのか?」「他の企業ではダメなのか?」といった質問です。これに答えられないようであれば、競合他社との違いが分かっていないことになってしまい、せっかくの志望動機も説得力が無くなってしまうでしょう。
そのため、志望する企業と競合他社を比較するのは企業研究をするにあたってとても大切なことなのです。他社比較の方法は、事前に上の『企業研究の材料を集めていく』をしっかりやっておく必要があります。でなければ他社との違いに気付くことはまず出来ません。
また、競合他社を調べる際も、基本的には『企業研究の材料を集めていく』で書いた企業研究をしていくことになります。こうした作業は非常に面倒ですが、やればやるほど企業同士の違いが分かってくるので、面接では具体的な発言が出来るようになります。
志望動機の基本の形
企業研究が出来ていれば志望動機を作るのはとても簡単です。以下のような順番で文章を作っていけば良いのです。
- 志望理由を端的に話す
- 入社してからしたい仕事
- その仕事がしたい理由・志望する企業でならその仕事ができる根拠
- 自分の強みをその仕事にどう活かしていくか・どのような力になれるのか
では、具体的に1つ志望動機を作ってみます。
志望動機の例(とある住宅メーカー):
- 御社が扱う住宅であれば、人と環境に寄り添った商品を提案出来ると感じたので、志望致しました。
- 私が入社しましたら、人と環境に優しい住宅を広めていきたいと考えております。
- そう思った理由は、大学のゼミの研究で地中熱の勉強をしたことがきっかけです。(地中熱というのは、地下数mにある、年中温度が一定の熱のことですが、温度が約20℃ですので、夏は涼しく、冬は暖かい特徴があります。)私はこの勉強を通し、身近にある自然エネルギーを使うことで、無駄な電気を使わず、人と環境に優しい暮らしを実現することが出来ると知りました。そうした中で、御社の「○○」という住宅を知りました。これは吹き抜けなど構造から空気の流れをつくり出したり、太陽光発電や「※※」を使って、使用する電気を最小限に抑えながら快適な住まいを実現する商品ですが、とても魅力的に感じ、こうした商品をもっと世に広めたいと思いました。
- そこで、これまで学んできた知識や△△で培った継続力を活かして、お客様が求める住まいを妥協なく追及しながら、「環境に優しい」という付加価値も同時にアピールしていきたいと思っています。
※赤文字で示した部分は、全体のボリュームを減らしたい時に削る
私の場合は、大学で環境に関する勉強をしていたので、住宅メーカーの環境に関連した商品に注目し、志望動機を考えました。自分の経験を志望動機に盛り込むことで、オリジナリティが増します。
『企業研究の材料を集めていく』や『ワンランク上の企業研究』をしっかりと行っていれば、私が作った志望動機よりもはるかに魅力的な志望動機が出来るはず。余裕を持って企業研究・志望動機作りに取り組んでみましょう。
まとめ
志望動機は必ず聞かれる質問であるにも関わらず、効果的な作り方を知っている人があまりにも少ないと感じています。そのため、このページに書かれている方法を身に付けるだけで多くのライバルに差を付けることが出来ると思います。
また、企業研究をしっかりと行うことで知識量が増え、他の様々な質問にも具体的に答えることが出来るようになるでしょう。
企業研究は手間がかかって大変ですが、面接を有利に進めていくためにも抜かりなく対策を行っていきたいですね。